それぞれの選択の尊重:京都学園大学バイオ環境学部食農学科

自分らしくとは

松本悠(京都学園大学バイオ環境学部食農学科)は、大学院への進学準備を進めている。

「本格的に大学院進学に向けての準備をし始めて、先生に相談に乗って頂く中で、機能性食品の分野の研究に取り組むには生化学を学ぶ必要があることを知りました。ですが、現在所属している食農学科には生化学の授業がなくて。先生と話し合って、バイオサイエンス学科の生化学の授業を受けることにしました」。

そして松本はいたずらっぽくはにかんで、こう付け加えた。

「単位は、付与されないんですけどね」。

大学院進学を

松本は、京都学園大学の大学院を含めた3つの大学院を受験する予定である。

「学費だけを考えると国公立への進学がよいけれど、研究環境を考えるとこの大学も選択肢の1つです。特に進学に関しては、先生に何度も何度も相談しています。まだまだいろいろ調べなければならないことでいっぱいです(松本)」。

その原点

松本は自身の高校時代をこう振り返る。

「高校時代は少し荒れていて、学校にもいかない日が多く、親にも反抗し続けてました。長い反抗期のようなものでしたね」。

松本の表情が変わった。

「そんなとき、父が癌になって。父は、そのまま癌で命を落としました。私は人生で初めて人の命や健康について考え始めました」。

松本は続けた。

「当時、私が人の健康に関わる仕事に対して持っていたイメージは『医学・薬学系』。それだけでした」。

松本の転機は、先の見えない中でただ漠然とテレビを観ていた時のことだった。

機能性食品という分野があること

「テレビで機能性食品という分野があることを、初めて知りました。お菓子作りが好きで食品には興味があったので、人の健康状態を良くすることができるような食品の開発ができたら、というのが食品分野に進みたいと思ったきっかけでした。母から浪人はダメだと言われていたので、少ない時間でとりあえず必要な科目の受験勉強をして、ここに入学しました(松本)」。

大学入学後

松本は大学に入ってから、学部の勉強だけで機能性食品の研究開発に携わるのは難しいことを知った。

「大学受験の時に学部・学科を選ぶ際には、機能性食品という言葉とざっくりとしたイメージは持っていましたが、どの学科が機能性食品の勉強にもっとも適しているのか良く分からなかったです。とりあえず学部の中でもっとも新しい学科の食農学科を選びました」。

松本は息を吸い込んだ後に、こう続けた。

「入学後、かなり早い段階で大学院に進学しようと決めていました、私の気持ちとしては。しかしいざ、そう思い始めたら、そもそも何を勉強すれば良いのか分からない、ということに気がついたんです」。

相談

「2回生のスタートアップゼミでお世話になった深見先生に大学院進学について相談したところ、英語での足切りがあることを教えてもらったので、まず英語の勉強をしようと思いました(松本)」。

深見治一(京都学園大学バイオ環境学部長)は、当時のことをこう振り返った。

「松本さんは機能性食品の研究に取り組みたいと言っていたので、ここ京都学園大学の大学院以外にも他学の大学院の受験も勧めています。どの大学院に進学することが松本さんにとって良いのか、これは本人がその後どうしたいのか、本人次第ですよね」。

進路についての見解

深見は、自身の大学院進学に関する見解をこう付け加えた。

「本学の昨年度の実績でいうと、例えばバイオサイエンス学科では約80名が卒業しました。卒業生は就職する学生が多い中で、大阪大学、広島大学や島根大学の大学院に進学した学生もいました。皆進路は決まり、新たなステージで頑張っています」。

研究の世界をよく知る深見は、研究の世界の現状に関して自身の考えを述べた。

「本学から、先に挙げたような、いわゆる国内の著名な大学院に進学することは、アカデミックなキャリアをアップさせることには、確かになると思います」。

深見は一息ついてこう続けた。

「一方で。研究環境はこの大学にいた時よりもっと競争的ですので、有名国立大学大学院に進学したということだけに満足してしまったとしたら。往々に、人はそういう部分があります。もし本学の大学院に進学した場合は。大学院進学者は現状では少ないため、研究機器や先生を思う存分を活用することが可能です。けれども、同時にそれは同期や先輩研究者が少ない環境で自分を律して研究する必要があるということ、でもありますよね」。

わからないことばかりの中で

現時点では、分子栄養学や生化学、どの本を開いてもまだまだ読み解くのは難しいが、松本によれば「本は借りるより手元に揃えておきたい性格」らしく、必要な本はアルバイトで稼いだお金で購入しているという。

深見は応援する教え子の進学の意思を受けて、こう締めくくった。

「もし。松本さんのような学生が本学の大学院生として、研究室の後輩指導などにもあたってくれると、彼女のスキルも上がって、さらに研究室全体の研究環境の改善にもなります。一朝一夕では実現できないかもしれないですが、そのような流れを作りたいですね」。

松本は、今日も自身の将来を切り開くべく学びを続けている。

京都学園大学 副学長 / バイオ環境学部 学部長 / 同学部食農学科教授

深見 治一

京都大学大学院農学研究科博士課程農芸化学専攻。三菱化成工業(現三菱化学)総合研究所、サントリー先進技術応用研究所主席研究員を経て現職。特許出願約120件、その中で明細書作成、特許審査対応などを数多く経験。企業において、競争的資金を活用した研究開発、産官学連携を実施。また、地域企業との連携(農商工連携に参加)や京都学園大学リエゾンセンター長として産官学連携に尽力。専門分野は、「食品化学」「食品分析学」「有機化学」。担当科目は、「食品化学Ⅰ・Ⅱ」「亀岡学」「食農環境概論」「科学英語B」等。所属学会は、「日本農芸化学会」「日本生物工学会」「日本油化学会」「日本ビタミン学会」等。