“人の力になりたい”という意欲と(後編):中央大学ボランティアセンター

前編から続く

木村亘佑(中央大学法学部国際企業関係法学科)は、東京のアパートで2016年4月16日のニュース速報を目にしていた。

「とにかく『行かなければ』という気持ちで、地震が起きた1週間後に熊本に向かいました。まずは家族に、そして友人の顔を見るために」。

「徐々に地震の情報が入ってくるにつれ、状況が少しずつ分かってきました。震災によって、私の実家もある熊本市東区にあった祖父母の家は大規模半壊の判定を受け、公費によって解体されました。両親が共働きだったために、18年間、多くの日々を祖父母の家で過ごした私にとっても衝撃的でした。今回の熊本地震は直下型で、熊本県内でも地域ごと、世帯ごとで被害の差が大きく異なっていました。私の地元は幸いなことに大きな被害は免れましたが、近くの地域は被害が大きく、とても他人事とは思えませんでした。震災は理不尽なもので、住み慣れた家や他者との関係性、財産などを悉く奪っていきます。 その話は熊本地震の前から、東北での活動を通して知っているつもりでした。ただ知っているだけで、本当に心から理解してはいなかったのだと、恥ずかしく思いました(木村)」。

手探りの中で、意欲を活動として

1年間の気仙沼でのボランティア活動経験があった木村は「被災地において自分は何ができるのか」と自問自答する中で大学に戻った後、地元熊本に関わりたいという思いを胸に、熊本県阿蘇郡西原村の復興支援活動を目的とした「チームくまもと」立上げの相談を持ちかけた。

相談を受けた中央大学ボランティアセンター長の中澤秀雄(中央大学法学部教授)はこう振り返った。

「中央大が気仙沼で3年間お世話になった日本における災害看護の第一人者、故・黒田裕子さんの口癖は『理念なきボランティアは必要とされない』でした。木村君の意欲と迅速な行動を見て、その言葉が思い起こされました。「チームくまもと」の立ち上げをセンターとして強く支援しようと、コーディネーターや事務方とも相談、情報収集を開始し、現地視察も行ったうえでセンター内で必要な事項を詰め、ゴールデンウィーク明けには活動できる目途が立ちました」。

「チーム熊本」としてのボランティア

チームくまもと」は、最初に熊本県阿蘇郡西原村現地では小学校などに開設された避難所で「被災地NGO恊働センター」の指導の元「足湯」を行った。「足湯」は、阪神淡路大震災のころから被災者の心を癒す活動として行われてきたことを事前のリサーチやセンターの教職員との協議から知っていたためである。ぬるま湯をはった桶に足を入れてもらい、同時にそっと手をもみ、ほぐしたり、肩に触れて被災者の「つぶやき」を聴き、気持ちに寄り添うことを目的としていた。「足湯」を継続的に行っていくことに加えて「西原村農業支援ボランティアセンター」の紹介により、被災して農作業が難しくなった被災者宅を訪れ除草作業も行った。

被災者に寄り添うこと、そして被災地域にいる子どもたちの心身のケアのためのエンターテインメント企画の実施など、多岐にわたる活動を企画立案し、実践してきた。

「被災者の方々を支援していくのは外部事業者のサービスや行政の制度に依る点も大きいですが、私たち学生はより日常的な人々の暮らしにアプローチして、人と人との繋がりに触れることで何かができるのではと活動を通じて感じました。活動を振り返れば反省すべき部分も多々ありますが、被災地支援活動を行わなければ気付けないことや学べないことも多くあったと感じ、そういった活動に携わらせて頂く事ができたのは幸運であったと強く感じています(木村)」。

センターの役割とは

中澤はボランティアセンターの役割についてこう話す。

「自主性を尊重する。そこは絶対に必要な要素です。そして、センターの役割はそこから始まります。活動する学生たちの安全の確保、活動拠点における様々な調整、活動を通じた学びの結晶化、そしてもっとも大切なのは学生の活動を支援する資金の調達とマネジメントです」。

自発的な意志を持った学生を継続的に支援するためには相応の予算が必要です。そのためには関係者の理解と巻き込み、また学外支援者の方々との継続的な対話と我々の活動に共感してくださるお気持ち、そしてその上での皆様からのご支援が必要不可欠です。本センターは立ち上げからまだ5年、この点においてはまだまだ過渡期ですね(中澤)」。

終わらない復興

チームくまもとの立ち上げから2年が経ち、木村は活動拠点である熊本県阿蘇郡西原村における現状と課題についてこう語った。

「『現地の問題はこれです』と簡単には言えないことを痛感します。仮設住宅では子供たちの遊ぶ場所が限られており、子供たちは住宅の近くや集会所で遊んでいました。すると、それが同じ仮設住宅に住む高齢者の方々への迷惑行為となり、世代間のもめごとになることがありました。また、よそ者の自分たちからすると、『みんなで助け合えばなんとかなる』と思うことも、実際には『あの人とは合わない』『一緒ならやめておく』など、見えないところでの課題は山積みです。今自分たちができることは、現地の方々と対話し、そこから教えていただいたことを活用して、柔らかくつなぎ合わせていくことかと思います」。

はまらいんや」の活動が2011年の学生活動から産声上げてから、代替わりをしながら7年の月日を超えてきた。そしてまた、「チームくまもと」の活動に学び、巣立っていく多くの学生たちがいる。

中央大学

ボランティアセンター

当初は中央大学ボランティアステーションとして2013年4月に設立され、2015年4月からは専従スタッフ(嘱託・パート職員)3名体制となり、ボランティアセンターとして学生の活動を支援している。それまでも、学生課や学生サークルを中心にボランティア需要に対応する時期が続いていたが、東日本大震災での学生のボランティア活動から、継続的にボランティア先との関係を作っていくことや学生の活動を支援していくことを目指しボランティア組織づくりを行った。センターの設立を経て、ボランティアで得た学びを学生に還元していくこと、また福祉やまちづくり分野での多摩地域での日常的なボランティア活動も推進している。