「大学で漫才の授業がありました」:京都光華女子大学短期大学部ライフデザイン学科

資質を少し開放するだけで

初夏の日差しの中、校舎の廊下に学生の声が響く。

その日を迎えた学生は、「相方」と、自作の台本を見ながら本番前最後のリハーサルをしていた。

「だからちゃうって!ほんま何言うてんねん。」

「せやけどなー…えぇと、何やったっけ。あ~ここら辺まだ覚えられへん…。」

「さっきの所、もっと大声で言うた方がええかな?」

2人の女子学生は、笑顔で自分たちの出番を待っていた。

「緊張している?」

との問いに、

「めっちゃ楽しみです!」

「大爆笑とります!」

と舞台袖で意気込んだ。

 

なぜ人は笑うのか

京都光華女子大学短期大学部ライフデザイン学科で鹿島我教授が担当するもうひとつの授業、「笑いのコミュニケーション演習」。

この授業は、一風変わったスタイルで進められる。

現役の放送作家でもある鹿島が、テレビの人気バラエティ番組を実際に視聴しながら、その番組とコミュニケーションの関係性を解説。実際の漫才番組の中からネタを数本書き起こし、学生はコンビを組み、それを演じ模倣しながら、感覚をつかんでいく。最終的には学生が自らオリジナルの「ネタ」を考え、コンビで練習し、皆の前で「漫才」を披露する。

「笑い」を入口に、その構成や技法を理解・模倣することでコミュニケーション能力の向上を目指す。「笑い」を知り、最終的には実際に演者を体験することで、笑わせる者と笑う者との間のコミュニケーションへの理解を深めていく。

 

本番へ

いよいよ漫才本番の時を迎えた講義室には、緊張と期待とが混じり合ったような雰囲気が生まれていた。鹿島は、自らマイクの高さを合わせ、学生に本番開始の合図をする。講義室は、しばし笑いに包まれる。

 

緊張するのはなぜ

「緊張する理由は『無視されたらどうしよう』とか『聞いてくれんかったらどうしよう』っていう気持ちのせいも、きっとあるんです。だから、皆が一生懸命聞いてくれる体制が整っていると、そんなに恥ずかしくない。『発表するのが嫌だ、苦手だ』と思っている学生も、一度それを克服する体験をすると、人前で話すのが不思議と嫌いではなくなってくる」(鹿島)

鹿島は「コミュニケーション能力の習得と向上には、自らが持っている資質を少し開放すればいいだけ。漫才の内容を考えるポイントは『共通の話題』と『悩み事相談』。相方、そして聴衆の興味関心を惹き、多くのコミュニケーションをとりたくなるような『ネタ』であれば、自然と膨らみ、その中で笑いが生まれる」という。

「そうは言っても多分、実際学生は僕らには想像できないほどの緊張感を味わっていると思うんです。人前で話すだけでもしんどいのに、まさか漫才やるなんてね。でも、僕のポリシーとして絶対に最後までやり遂げさせます。最悪、台本見ることになってもいいから」(鹿島)

 

自分と、他人と。

コミュニケーションには自分以外の「相手」が必要。鹿島はこう語る。

「学生にはまず、テレビの漫才を台本に書き起こしたものをやらすんです。短時間ですが、学生2人で顔見合わせながら真剣ですね。これをやらせると、学生のお笑いタレントに対するリスペクトが凄くなります。『それまで考えたことが無かったけれど、実際に演じてみていかに凄いのかが分かった』と。自分以外の人のことを本当に考えられるようになるには、実際に自分でやってみないとわからないものなんですよ。」(鹿島)

 

どんな場面でも

「僕のほんまの願いは、別の所にもあるんですよ。」

「来年の今頃、学生たちはもう就職活動しているので、そこで緊張せずに話せるようになっていて欲しい。あとは、『大学で漫才の授業がありました』と、話題にできることかな。それは、他学の学生には、きっとできないことですからね。」(鹿島)

 

京都光華女子大学短期大学部ライフデザイン学科教授

鹿島我(かしまが)

大阪府立北野高等学校在学中、当時朝日放送で放送中だった『9年9組つるべ学級』にレギュラー出演。関西学院大学在学中に「9年9組」を構成していた新野新に師事、放送作家となる。大学卒業後は、バラエティを中心に活動するが『熱闘甲子園』の構成を機に次第にスポーツ、グルメといった得意分野を生かした番組へと方向転換。『虎バン』『ぶったま!』と阪神応援番組を担当。2006年にはクリエーターズ集団「ヌーベル工房ウェルダン」を設立。2010年4月より京都光華女子大学短期大学部ライフデザイン学科准教授として「エンターテイメント論」「漫才のコミュニケーション演習」などの授業を開講。2017年4月、同短大の教授。