目的は自信だから:京都光華女子大学短期大学部ライフデザイン学科

自分のしたことを少しでも

「僕が一番嬉しいのはね、『短大の2年間あっという間やった!』っていう言葉なんです。充実していたという事でしょう。これを卒業の時に聞くと、僕に対する褒め言葉やなと思います。」

京都光華女子大学短期大学部ライフデザイン学科 鹿島我 教授

授業とは何か

「ものすっごい楽しい!」

銭湯から出てきた女子学生たちからは、次から次へと口をついて言葉が出た。

京都の、昔ながらのたたずまいの銭湯でのことである。

京都光華女子大学短期大学部ライフデザイン学科には、「プレゼンテーション演習」という授業がある。担当教員の鹿島我は、放送作家を経て、大学教員に転身したという経歴の持ち主である。

「プレゼンテーション演習」の授業は、学生がグループに分かれて現場を取材、それを元に課題を探索、その解決方法を検討し、最終的に皆の前でプレゼンテーションするという流れで行われる。

 

面白くなかったら

鹿島の授業の内容自体は勿論、自分自身も「ショー」を構成する一員として、自身の服装にまでこだわり、徹底して演出する。

「昔、ある落語家さんが大学で教鞭をとられていた際、教室に入る時にお囃子を流していたんです。それを見て『すごいなぁ』って思って。その時『授業』というものの捉え方が全然違うと思ったんです。授業は『ショー』や、という考え方ですね。いかにして90分間、学生という観客を魅了できるか。そのために徹底して準備するし、実は授業はめっちゃ疲れるんですよ。授業が終わると『あれはあかんかった…』とか、『今日は受けへんかったな…』とか、反省もしますね。」(鹿島)

 

いかにして人を呼び込むか

2018年度「プレゼンテーション演習」のテーマは銭湯への顧客導入であった。

鹿島と学生たちは、授業の中で京都の上京区にある「旭湯」にフィールドワークに出かけた。

見慣れない銭湯の内観に学生は興味津々、ご主人に次々と質問していく。

「昔は洗う場所とか混んでいましたか?」

「どうして湯船に髪の毛をつけちゃいけないんですか?」

学生からの質問が飛び交う中、鹿島も銭湯のご主人に質問を投げた。

「菖蒲湯や柚湯などの際、来客数の変化はありますか?」

学生はその質問に続くように、次々と質問を重ねた。

「銭湯でイベントを開催したことはあるのですか?」

「銭湯にあって温泉にないものとは何だと思いますか?」

「どんな時にお客さんが多いのですか?」

とめどなく、学生たちから質問が溢れ出た。

 

勢いと自信と

鹿島は言う。

「なかなか形に出来ない学生もいるんですよ。そういう時には、僕の持っているカードをさりげなく、さりげなく出すこともあります。」

「あの子たちの中には、これまで自信を持てない高校3年間を送ってきた子もいるので、もし短大の前期で自信をつけられたら、そのまま残りの1年半、勢いをつけられる。逆にここで自信をなくすと、残りの短大生活を楽しめなくなるかもしれませんから。」

「学生たちが『自分でやった』と思えるように、声かけの仕方には凄く配慮します。目的は『自信』だから。ここはもう、ほんまに、テクニックやと思っています。」

「ものすっごい楽しかった。先日同じグループのメンバーで銭湯に行くと、常連さんが気さくに話しかけてくださって、すごい雰囲気いいなと思いました。」

「今年のテーマは銭湯で、めちゃめちゃ楽しんでいます。今後プレゼンもしなきゃいけないけれど、ずっと座って聞いているだけの授業よりも、こんな風に自分たちで動く授業ってすごい良いなと思います。」

銭湯から出てきた女子学生たちは口々に語った。

 

そこまでつないでくれた、ということ

鹿島は、高校時代はラグビーに熱中していた。

「ラグビーって、自分でトライをとっても、何事もなかったように引き上げて行くのが美徳なんです。根底にあるのが『たまたま自分が最後にトライしただけで、それは15人がそこまでつないでくれたからだ』という考え方なんです。僕にとってはプレゼンも同じ。みんなの前で話すのが得意な子は、発表して目立ちますし、その子の功績は当然ありますけれど、それが全てではなくて。発表するために資料を調べてくれた子がいるし、それを原稿に起こしてくれた子がいる。そういう子の方も僕は向いていたい。だから、プレゼンの最後には、他の人が言わなかった、気づかなかったようなところをコメントするようにかなり意識しています。やっぱり聞いた学生は喜ぶんですよ。授業の感想を聞くと、『先生が自分の事を言ってくれて嬉しかった』とかね。それが自信につながる。」

一度伸び始めたら

「僕、結構授業では学生を指名して答えさせるんですよ。学生には授業の初期に、『これまで授業で当てられるの嫌やったやろ?それは、正解を言わなあかんかったからや。僕はそんなことせん。みんなも答えを知らんような事しか聞かん。だから、何言っても恥ずかしくないねん。』と伝えます。短大に入学して来る子って、出来るはずなのに今までやらなかった子とか、やり方が分からなかった子が結構多いんです。その子たちは、一度伸びはじめたら早いんですよ。パソコンで言うと、容量がいっぱい空いているような状態ですね。なんぼでも入る。学生自身も、高校まであまり褒められた記憶もないし、まして人前で話した事で褒められたなどという経験は、なかなかないですから。それが自信になってくれたら、他の科目も伸びると考えています。」

 

京都光華女子大学短期大学部ライフデザイン学科教授

鹿島我(かしまが)

大阪府立北野高等学校在学中、当時朝日放送で放送中だった『9年9組つるべ学級』にレギュラー出演。関西学院大学在学中に「9年9組」を構成していた新野新に師事、放送作家となる。大学卒業後は、バラエティを中心に活動するが『熱闘甲子園』の構成を機に次第にスポーツ、グルメといった得意分野を生かした番組へと方向転換。『虎バン』『ぶったま!』と阪神応援番組を担当。2006年にはクリエーターズ集団「ヌーベル工房ウェルダン」を設立。2010年4月より京都光華女子大学短期大学部ライフデザイン学科准教授として「エンターテイメント論」「漫才のコミュニケーション演習」などの授業を開講。2017年4月、同短大の教授。